ブログ◆のんきのすゝめ~其の二「菓子はなぜ甘いか」

少し前の当ブログで「離乳食」を取り上げて「子育てはのんきになろうぜ」とお声がけしました。その際、松田道雄の「お誕生日ばんざい」という名文を紹介しました。
松田道雄先生を紹介するきっかけとなった「らぼずキッチン」(のおまけ)では、実はもうひとり、倉橋惣三(1882-1955)という人物の名を挙げています。

倉橋惣三先生は日本の幼児教育の父と謳われる教育者です。
彼の代表著作『育ての心』(1936)は、子育て真っ最中の方にぜひお読みいただきたい本です。この本は現在、フレーベル館から上下巻の2冊で出版されています。

らぼずキッチンでは『育ての心』のなかから「菓子はなぜ甘いか」という一文について触れました。家庭料理の極意、真髄、もっとも大切な部分が表されていると思ったからです。

——————————–引用ココカラ——————————–

「菓子はなぜ甘いか」

菓子はなぜ甘いか・・・・・・
これを菓子屋さんに問えば、
「手前共のは、砂糖を吟味してございますから」という。
これを科学者に問えば、
「糖質が主要素になっているからである」という。
向きをかえて、これを心理学者に問うてみると、
「舌の表面の味蕾の中にある味覚神経が刺激されるによるものである」という。
そんなことなら、聞かないだって判っている。これを子どもに問うて御覧なさい。子どもは妙なことを聞く人だというような顔をして、可愛らしく円い目で、暫く、あなたを見るかも知れないが、その答えは、直截に明瞭に、きっとこういうにきまっている。「お母さんが下さるんだから」

倉橋惣三『育ての心〈上〉』(2008、フレーベル館、P119)

——————————–引用ココマデ——————————–

どうです?

お母さんが下さるんだから

「妙なことを聞く人だというような顔」をして「直截に明確に」、「こういうに決まっている」んです。そうなんです。ごはんって、じつはこれさえ忘れていなければオールオッケーだと私は思います。

 

手をかけることは素晴らしいことです。私だってできるかぎりの手をかけたい。手間ひまかけたその料理を子どもが「おいしい、おいしい」とにこにこ完食してくれたら、これに勝るよろこびはないはずです。ところが、そうは問屋が卸さないのが現実ってやつなのさ…。彼らは「多すぎる」とか「まずい」とか「嫌い」とか「もういらない」とか平気で口にします。くそう(笑)
苛々予防のために、私がかつて先輩から贈られた言葉を皆様にもお贈りします。

<子どもが好き嫌いがあるのは当たり前なんだから、「のんき」にやりなさい>

大切なのは、大好きなママが(パパも)、自分のために時間を費やして”にこにこ”料理して、”にこにこ”一緒に食べることだと先輩は言いました。
確かにそれこそが子どもにとって最高のご馳走のはずです。
分量と栄養が適切で頑強な<身体>を構築する食事が、強靭な(しなやかに強い、柔軟で粘り強い)<心>を育む食事とは限りません。

 

食事は、同席者の叱責やしかめっ面でなくって、楽しいという思い出とセットで子どもに提供し続けるー。
子どもが、料理を完食したら感謝(よかった、うれしい!)と絶賛(ありがとう!)の嵐だし、残したなら親が目の前でおいしそうに食べたらいいんです。あまりにおいしそうに食べたら、食べ続けたら、子どもは「やっぱり…食べる」となるものです。子ども時代の私がそうでした。

もちろん、今日や明日すぐに食べるとは限りません。だから親は食べ<続け>る必要があるでしょう。
でもね、「食事=楽しい」「食事=親は残さない」を繰り返し<学習>した子どもは、嫌いなものもいつか食べることができるようになる気がします。好きにはならなくても食べるように。

 

好きにならなくてもいいんですよ。苦しんでまで好きにならなくていい。
苦いものや辛いものを嫌うのは動物としては正常な反応と言われています。野生下では癖の強い味の植物には毒がありがち。だから、それを好んで食べないよう本能に「嫌い」がビルトインされているそうです。

じゃあなぜ食べることができるようになるのか。
それは、メンター(=指導者、ここでは親)が癖の強いものを食する様子を繰り返し目の当たりにするうちに、子どもは「嫌い」という自分の判断の確実性がゆらぎ(だって何事につけても「正しい」判断をくだすはずの自分の最も信頼する大人=パパとママが、目の前で「好き」「おいしい」と食べているんですから)、「安全でおいしいかも」となんとなく思い始めて、いつのまにか食べることができる(場合もある)んだと思います。

 

ようするに(とくに乳幼児期の)好き嫌いは本人の責任でなくて神の御業なんです。神様のせいだから、嫌いでもしょうがないんです。むしろ「この子は神に選ばれて野生の力、生きる力がある」と誇りに思ってもいいと思います。

もちろん、好き嫌いが少ないほうが食材選びがラクになります。でも「ラク」になる程度のことなんです。
たとえばビタミンCはミカン以外にもレモンからとれます。イチゴやキウイ、ピーマンやジャガイモ、ブロッコリーからもたくさんとれます。好き嫌いが困るのは栄養が偏るからですよね。偏らない方法はいくらでもあります。

大切なのは、その子が大人になったときに、今ここにある食べ物が「有り難い」ものであり、食べ物を粗末にすることは「勿体ない」と理解…実感していることなんです。

 

大好きなお母さんが下さるんだからンまいですよ。
大好きなお母さんがしかめっ面でなくて、大好きなあの笑顔で下さるからンまい。
大好きなお母さんが笑顔でおいしそうに食べるものが、ンまくないわけがない。

にこにこ遊んで、にこにこ料理して、にこにこの食卓をお過ごしくださいね。もちろんお父さんもですよ、言うまでもないですが。

 

おまけ:
『育ての心』は『育児の百科』と同様に、当館の「ライフスタイルライブラリー」に所蔵していますが、現在新型コロナの対策のために閉鎖中です。申し訳ありません。市内の図書館等でぜひご覧ください。心がふっと軽くなります。

かんだむつみ

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